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SAPについて個人的なメモをまとめたブログです

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イギリス郵便局事件から考える富士通の将来性

イギリス郵便局に富士通子会社が納品した、システム「ホライゾン」の欠陥が
話題になっています。

イギリスの郵便局をめぐる史上最大規模のえん罪事件で、富士通の幹部が公的な調査委員会に出席し、会計システムに導入当初から欠陥があったことを、富士通関係者が認識していたと証言しました。

なぜこのようなことが起こったのか自分なりに考えていきたいと思います。

富士通は何で儲ける会社なのか?

富士通の事業は大きく下記の3つに分かれています。
①テクノロジーソリューション・・ システム開発、サーバなど
ユビキタスソリューション ・・ パソコン・タブレット
③デバイスソリューション  ・・ 半導体・電池

2022年度、2012年度の決算資料を見ているとこれらの事業別売上は以下のようになっています。

【2022年度】
テクノロジーソリューション:3兆1000億円
ユビキタスソリューション :2300億円
バイスソリューション  :3800億円

【2012年度】
テクノロジーソリューション:2兆9000億円
ユビキタスソリューション :1兆円
バイスソリューション  :5000億円

ソリューションが伸びている一方でユビキタス、デバイスといったモノづくり系は減少していることがわかります。NEC、日立などにも言えることですが、やはり中国、台湾とのコスト競争に負けてハードウェアからは撤退しています。また、日系だけではなく、IBMなどにも同じことが言えます。IBMThinkpadを2004年ころにレノボに売却していて、そこからはシステム開発などのソリューションビジネスに舵を切っています。


ホライゾン問題とは?

Horizonは2000年に稼働したが、それ以降、原因不明の不一致や損失が郵便支局支局長(サブポストマスター)から報告されるようになった。郵便事業会社は、Horizonは堅牢であり、支局長による支局口座の不足や不一致はHorizonに起因する問題ではないと主張していた。(Wikipediaより)
イギリスのシステム会社「ICL」を買収したことはソリューションビジネスに特化していく一貫だったと思います。
今回の一連の出来事を時系列に並べると以下になります。

1990年代・・イギリスICL社の子会社Pathway社がホライゾン(Horizon)を開発
1998年 ・・富士通がICLの単独株主となる
1999年 ・・ホライゾンをイギリス全国の郵便局に展開
2000年 ・・ホライゾンデータに依存した有罪判決が6件
2001年 ・・副郵便局長41名が起訴される
2002年 ・・副郵便局長64名が起訴される
               郵便局側はシステム不具合を否定
2002年 ・・ICLは社名をFujitsu Servicesに改名
2009年 ・・副郵便局長のアラン・ベイツは正義のための郵便局長同盟を設立
2017年 ・・ベイツ率いる郵便局長のグループが郵便局に対して集団訴訟
2019年 ・・原告側が勝訴。原告それぞれ2万ポンド(現レートで376万円)支払われた。
2024年 ・・『ミスター・ベイツ vs 郵便局』ドラマが2024年1月1日から放送
      (再び世間と政治の注目を集める)

Horizonの前身システムから訴訟になるようなシステムバグが潜在していたようで、中々複雑なシステムだったんだと思います。バグを作ったのはICL社・Pathway社の問題ですが、ITシステムである以上、バグはつきものというか、郵便局長からおかしいという声も多くあったのに、郵便局側・裁判所側が頑なに不具合を認めなかったことも大きな問題でしょう。一度、システムが納品されると、それ以降は郵便局のシステム部門で保守していたはずでなぜシステム不具合が表面化しなかったのかは疑問です。
富士通社が単独株主になったのが1998年で現在は富士通子会社なので、今後、富士通がどの程度の賠償責任を問われるかは不明ですが、現時点では「道義的責任」があると述べるに留まっています。システム納品時には受入側(郵便局)のテストも通った上で納品するので、それ以降は郵便局側が不具合と認めなかったので、郵便局側・司法の問題な気もします。
なぜ今、クローズアップされるのか?について。このタイミングでドラマを制作したりと、ドラマは見ていないですが、富士通にも責任の一端を押し付けようとしているのではと勘ぐってしまいます。事実、X上ではFujitsuを非難する声が多く上がっています。。

今後の富士通が抱えるリスク

日本のSIビジネスに特に顕著なのがシステム開発プロジェクトを実行する際、自社では開発をしないで下請け・孫請けに仕事を依頼することが慣習に行われています。こうなるとシステムの中身を自分たちは知らないで、子会社・下請け会社の技術・コンサル力に依存することになります。本来であれば、システム会社を買収するにしても富士通社が持っている開発方法論を適用していったり、富士通社員も子会社のプロジェクトに参画して細かいところまで見ていく必要がありますが、そういうことをしていないんだと推測します。私自身も過去、日系大手SIerの仕事に関わったことがありますが、みんないい人ではあるんですが、自分たちで仕様を考えたり、開発したり、コンサルするということをしないです。問題が発生したときに顧客と下請け会社の板挟みになり、そこをどう取り持つかに注力して本質的な問題解決を図ろうとしないというか・・。
東大生・京大生の就職人ランキングに上がるアクセンチュアアビームコンサルティングなどITコンサル会社も同じような業種ですが、彼ら・彼女らは自分たちで考えて、自分たち手を動かしてシステムを作っていきます。東大生・京大生の就職ランキングに富士通NECが入らないのは収入の問題だけではなく、日系老舗IT企業では生きた知識・スキルが手に入らないことを東大生・京大生はよく知っています。
今後も富士通NEC・日立も)はITビジネスを拡張していき、この事業の売上は増えていくんでしょうが、同じような問題が発生することはありえますし、ビジネスリスクとして考えておく必要があります。