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SAPについて個人的なメモをまとめたブログです

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何故グリコなど大手企業はSAPを導入する必要があるのか?

グリコのシステム障害をきっかけに普段は表に出てこないSAPがXなどSNSを賑わしていますね・・。ERP導入PJでは延期や稼働後の障害は日常茶飯事なのですが、今回は日本国民に浸透しているプッチンプリンが食べられないとあって、より話題沸騰している気がします(障害が落ち着いたら買いに行きます)。
また、ポストを見ていると、「SAPは使いにくい!」という書込みが非常に多いんですよね。というわけで、私もそれに乗っかり、ではなぜ大手企業はそのような使いにくいSAPを導入する必要があるのかを考えてみます。フォーチュン500企業のほとんどが基幹システムとしてSAPを使用しています。アップル、ナイキ、コカ・コーラなどです。

①そもそもERPとは?


ERPの歴史の前に1960年代にMRP(資材所要量計画)システムが開発されたことにより、顧客の要求を満たせるように適切な生産計画を行えるようになりました。
そして、さらに1990年代に出てきたERPでは、生産や在庫だけではなく、販売・生産・購買・在庫管理・財務会計管理会計・顧客管理・人事管理といった企業活動全般を統合できるようなソフトウェアとして開発されてきました。ERPがなかった時代はそれぞれの業務領域で個別のシステムを使用していましたが、ERPではそれらを一元管理できるようになりました。


(https://www.projectline.ca/blog/what-is-erp-enterprise-resource-planning)
 古いSAPユーザだと、SAP R/3という製品を知っているかもしれませんが、このR/3のRはリアルタイムを意味しており、各モジュールは時差なくリアルタイムにデータ連携しているということになります(例:在庫計上するとリアルタイムに会計データができる)
②SAPは様々な業種への対応
①では、ERPが企業の様々な業務領域に対応していると述べましたが、SAPは多くの業種へ対応していることも売りにしています。基本的なビジネスというのはモノ(orサービス)を仕入れたり生産して、顧客に販売することですが、業界それぞれに固有のビジネス特性があります。過去に素材産業向けにSAPのMill Productsというソリューションを使ったことがあります。例えば、素材産業では特注品が多いため、その度にマスタデータとして品目コードを登録するのですが、その後、そのコードは使用されないため、大量のマスタデータが登録されることになります。そのため、Mill Productsでは、品目マスタの考え方を従来のSAP機能から変更して素材産業向けに使いやすくなりました。このようにSAPは全世界で多くの顧客から使われているからこそ、業界特有のシステム課題をキャッチアップして、ソリューション提供しています。これが国産のERPだと多くの業種をカバーしていくことは難しいでしょう。ここら辺の事情は下記ページも詳参考になります。国産ERPが抱え続けた課題と進化 日本ベンダーが舞台裏を語る - キーマンズネット

③グローバル展開しやすい
法律・税制・多言語対応(ローカライゼーション)
企業の事業活動が大きくなってくると海外展開が視野に入ってきます。それまでは国内ビジネスなので、自前の基幹システムを使っていても、海外でビジネスするにはその国の法律や税制に準拠するようなシステムに更新していかないといけません。
ブラジルは税金の種類が56種類あり世界で最も複雑な税制を持つ国の一つと言われています。https://www.digima-japan.com/column/country/2138.html
ブラジルでビジネスをするにはこの税制に合致したシステムへ改修する必要がありますが、自前でこのような税計算システムを開発することはとてもリスクが高いです。システム不具合により申告額が間違っていれば、税務当局から罰則を科されこともありますし、場合によっていは投資家からの信頼も失います。また、税制の更新頻度が高いと、一度開発しても都度、改修コストが発生してしまいます。一方でSAPでは各国ごとの法律・税制というのはCountry Versionという仕組みで実装されており、現地のマーケットに合わせてローカライゼーションすることができます。また、法律・税制が更新される場合もSAP社がSAP Noteという形でパッチプログラムを提供してくれますので、比較的簡単にシステム対応できます。
内部統制
海外子会社が横領、粉飾決算、など不正を行っていることがニュースを見ることがあると思います。もちろん、これは国内子会社でも親会社でも起こりうることですが、特に遠方にある海外子会社まで統制をきかすことは難しくあります。システム観点での防止としては、SAPでは承認プロセスを設ける、データ更新に履歴が残る、完了した受注は更新できないなどにより内部統制を効かせることができます。また、監査レポート機能もあり会計監査、システム監査で監査会社に提出することにより透明性を担保します。

④コミュニティの存在
世界的なグローバル企業が多く使用しているため、それらシステムに関するナレッジが多いです。また、日本では人手不足と言われていますが、世界的にはSAP技術者は豊富でSAPのコミュニティもあるため、何か問題があれば自社に留まらず、そこで解決することもあります。

ちなみに上記の大部分はOracle EBSにも言えることかもしれませんが、実際にはSAPの一人勝ち状態でブランド力を勝ち取ったと言えるでしょう。ビジネス系IT最強のMicrosoftでさえ、DynamicsでSAP ERPのシェアを奪っているとはいい難いです。

なぜ、SAPは使いにくいと言われるのか?
なぜX等ではSAPが使いにくいと言われるのか?SAPもFioriやBlue crystalなどUIの改善をしているのでしょうが、相変わらず使いにくいと言われますよね・・。私は「誰が使いにくいと言っているか」に着目しました。SAP ERPというワードが示す通り、ERP経営資源管理なので、データ入力などのユーザインタフェースには力を入れていこないで、より内部ロジックを重要視してきたのかなと。
実際、日本の導入に比べて海外の導入では使い勝手が議論の的になることは少ないです。その背景としては、日本ではデータ入力などのオペレーションを正社員がやることがある一方で、海外ではデータ入力などのオペレーションはパートタイマーが
行うことがほとんどです。そのため、海外ではユーザインタフェースではなく、より内部のサプライチェーンがちゃんと回るかなどERPの本質的な部分から議論が始まります。
使いやすさを追求していくことも大切なんですが、UIが関係するデータ入力などの仕事は単価の低い仕事で、件数多い場合はExcelアップロード機能を開発するとか、そのうち、自動化していくことを視野に入れれば、優先順位としては高くないのかなと思います。

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