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SAPについて個人的なメモをまとめたブログです

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「生成AIが解く「塩漬けERPの呪縛」 アドオンと決別へ」を読んで

日経新聞で「生成AIが解く「塩漬けERPの呪縛」 アドオンと決別へ」という生成AIとERP関連の記事があったので読んでみました。

生成AIが解く「塩漬けERPの呪縛」 アドオンと決別へ - 日本経済新聞

記事の要旨としては、生成AIが普及してきて、基幹系システム領域へも進出してきています。SAPのAIアシスタントサービス「Joule」を例に挙げ、生成AIが話し言葉でのデータ検索や分析を可能にし、企業経営に変革をもたらしている。これにより、基幹系システム構築に関与してきたITベンダーの仕事やユーザー企業の基幹系システムの構築方法が変化する可能性があるというものです。

確かにERP業界はなかなか新しい技術や開発手法を取り入れない傾向が強く、ウェブ系で新技術が発展していてもどこ吹く風というように他人事のように捉えている人が多いように思います。今回のChatGPTなどの生成AIブームは果たしてSAPの領域にも踏み込んでくるのかというところですが。
記事によると今のところは、SAPの中でもデータ検索や分析といったレポート系機能の利便性を向上させることが可能になるようです。ただ、この流れはSAP Fioriであったり、GUIのテーマ「Blue Crystal」(すでに新しくない!?)が出てくるなどユーザインタフェースの変更と同じようにも感じます。
また、記事では、生成AIは大量の学習データが必要なので、オンプレミスではなくクラウド型(SaaS型)のERPへ移行していき、そこでは自社用のアドオン開発の自由度は少なくなり、これまでカスタマイズやアドオンをガンガンやってきた日本企業には選択を迫られるとあります。そして、アドオン開発で潤ってきた日本のITベンダーの仕事も変化するかもしれないとあります。
私もERP業界にはもっと新しい技術はプロセスが入ってきてほしいと考えていますが、今回のJouleはあくまでもデータ検索や分析に特化したもので、ERPの根幹である、販売管理、生産管理、在庫管理といったSCM領域や管理会計財務会計のFinance領域が根本的にどのように変わるかについての言及はありませんでした。
アドオン開発でも分かりやすい例として独自のレポート・帳票を例として挙げていますが、むしろアドオン開発の工数で多いところとしては業務プロセスに関わるところなんですよね。現状でもレポート開発はSAPクエリなどである程度は開発工数を抑えられていると思います。
そのため、現状での生成AIではERPからアドオン機能をなくすという道筋は無理筋ではないでしょうか。むしろ、今後、SAP社がABAP(SAPの独自言語)の自動生成機能やローコード開発を提供してくると、ますます日本企業はアドオン機能を増やしそうな勢いを感じています。。まあ、アドオン開発は必ずしも悪いことではなく、日本は自動車など製造業も多いので、そこを改善するためには標準SAPでは業務改善できず、必要に応じてアドオン開発しているという背景もあると思います。
生成AIという新しい技術がこの業界にどう変化をもたらすかは今後も注視していきたいですね。